【海外体験記】ドライカウンティでの思い出

今日は、私が経験したドライカウンティでのお話をします。
17年のアメリカ滞在中、二度ほどドライカウンティに行って戸惑ったことです。テネシーに一度、ニュージャージーに一度行きました。

両方とも和食レストランを見つけて嬉しく思い、まずビールを注文すると、ウェイターが怪訝な顔をしました。レストランでアルコールが扱えない地区なので、どうしても飲みたければ近くのスーパーで缶ビールを調達して来いと言われました。
そのため、一度店を出て、ビールとワインを調達して仕切り直しです。初めての経験で戸惑いました。

ドライカウンティ(Dry County)、つまりアルコール禁止の郡がアメリカにはあるのです。
その反対が、アルコールOKの郡のウェットカウンティ(Wet County)、一部OKの郡はモイストカウンティ(Moist County)と呼ばれています。
かなり戸惑いましたが、アメリカ・ニュージャージー州の和食レストランでも同じ経験をして、なんとなくおかしいなと思いながら、近くの酒屋まで行って調達しました。

体験記

いい加減お酒を飲んだところで、そのお店の日本人女将が出勤してきたのですが、「私が初めからお店にいれば、代金はチップ代わりに余分に払えばいいから、ビールと日本酒を出したのに」と言われました。これらの規制はどうやら宗教上の規制のようです。
ドライカウンティではありませんが、私たちが新しく建てた工場付近に和食店ができました。ビールを頼むと、カタコトが話せる香港人の奥さんから「ない」との返事。ご主人が日本人のシェフで、お店の名前はただの「めし屋」です。
アルコールのライセンスのお金がまだできないので、アルコールが提供できないとのこと。みんなで近隣の日系企業に電話をかけまくり、お店の応援をしました。

女将さんが一計を立て、なんとお茶の急須と湯呑でビールを提供してくれることになりました。これを飲んで若手社員とワイワイ騒いでいると、女将さんに「お客さん、お茶を飲んで騒がないでください」と注意され、これには大笑いしました。
めし屋の名前もユニークですが、もっとユニークなのはマニラのリトル東京にあった「うらめし屋」という焼き肉屋、笑ってしまいます。
ロンドン郊外・ミルトンキンズにあった和食店も経営が上手くいかず店じまいの噂が出たときは、日系企業の方々が連絡を取り合ってお店の売り上げに協力していた良き時代でした。

私は日本のビールはいまや世界一美味しいと思っていますが、問題は酒税です。たぶん世界一高く、イギリスの軽く2倍だとか。戦前の「ビールは舶来品、贅沢品」との考え方がまだ残っていると聞きました。そういえば、戦前の軍隊が出陣の乾杯はビールが出てくることが多い画像が残っていますね。
もうビールは贅沢品ではありません。シンシナティ郊外のスーパーで、サッポロの大瓶がなんと当時1ドル20セントで売られていました。


「ドライカウンティでの思い出」より抜粋

清水 大輝

筆者略歴

  • 昭和47年 工学部機械工学科卒業
  • 三井系の機械メーカーに就職
  • 海外製鉄所向けのプラント
    見積もり設計の国際入札の窓口を5年経験
  • ケミカルメーカー
    国内営業を経験後、フィリピン・マニラに駐在事務所を開設
  • シンガポール駐在を経て米国ロスアンゼルスに赴任
  • 米国でデトロイト、アトランタの事業所を開設
  • LAとオハイオに工場を建設
  • ノースアメリカの代表となる
  • 大手自動車メーカーとの取引を10年かけて開始

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