「海外オペレーションと今後の語学学習の考え方」5/7

次にDr.ロペスの話をします。
スペイン出身でGMの副社長までなったDr.ロペスは、当時一代旋風を引き起こした人です。購買担当兼任人事担当副社長となったのです。
コストダウンにノーと言った技術者や購買担当者を人事権をもって左遷させてしまう人です。したがって、各担当者は自分の関連の部品メーカーの責任者を呼びつけ始めました。金額の大きいものを扱っている大手の日本のメーカーは、みんな枕を並べて討ち死に状態です。30%まけろとか40%まけろとか当たり前の状態です。

輸送トラックは全米をネット状に24時間走っているので、返せるものは全て返す。木のパレットは割れるから、プラスチックにして何度も使う。メタル缶をプラスチックにして返すから、その中にリフィルしてくれ。
もうやりようのないくらいにコストを絞り上げた上に、さらにDr.ロペスの命令で30%-40%です。たまったものではありません。日本人の会合ではお宅はいくらやられたという話題で持ち切りです。

私も交渉の後半に呼び出しを受けました。いよいよ当日になりました。忘れもしません。デイトンOH発のプロペラ機に乗り込みました。全く策がないとはこのことです。
ついでながらデイトンOHはライト兄弟の出身地です。航空博物館があります。
ライト兄弟は偉いものでプロペラを削る機械、風洞実験の風洞まで木で作っていました。
私が若い技術者を連れて頻繁に行ったところです。あれがないとかこれがないとか言うな。今は電話一本でいろんなものが手に入るだろうと教えたものです。

海外オペレーションと今後の語学学習の考え方

さて、プロペラ機は着陸体制に入りました。その時あっと気づいたことがありました。
そうか、この手で行こうと。

担当者は待ち構えていました。今まで数多くの日本人の代表と会ってみんな手もなくひねってきたという自信と、今までの責任者の中で私が一番の若造だったのでニコニコ笑いながらもう分かっているだろうな、という調子です。
で回答はと担当者が切り出しました。いくら大手自動車メーカーの頼みでもこの国の法律を破ることはできないよと突っぱねました。どんな法律だと彼。知らないのかい。合衆国にはDumping Lawという法律があるだろう。フェアトレードを促進するためと独占禁止法のため、何人も赤字で商売をしてはならないという法律があるのです。30%も値下げするということはこの国の法律を破れと言っているのと同じだと。なぜなら我々はこれ以上値下げをすると赤字商売となる。値下げをするとDumping Lawに抵触する。(infringe)
これには担当者も黙り込んでしまいました。
しばらくの沈黙のあと、だったらいくらだったらいいのと立場逆転です。

もったいをつけて、最初から腹は決まっていたのですが、気持ちだけの3%で終わりです。
ふらふらと購買部を出てまた空港に行き、プロペラ機の中で飲むビールのうまかったことを昨日のように覚えています。LA時代にLAタイムズの記事を見ていたおかげで助かりました。


「海外オペレーションと今後の語学学習の考え方」より抜粋

清水 大輝

筆者略歴

  • 昭和47年 工学部機械工学科卒業
  • 三井系の機械メーカーに就職
  • 海外製鉄所向けのプラント
    見積もり設計の国際入札の窓口を5年経験
  • ケミカルメーカー
    国内営業を経験後、フィリピン・マニラに駐在事務所を開設
  • シンガポール駐在を経て米国ロスアンゼルスに赴任
  • 米国でデトロイト、アトランタの事業所を開設
  • LAとオハイオに工場を建設
  • ノースアメリカの代表となる
  • 大手自動車メーカーとの取引を10年かけて開始

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