「海外生活45年を迎える私の海外体験記」
これは海外生活45年を迎える私が、ボストンやロサンゼルス、シンシナティ、香港、フィリピンで経験したお話です。
今日は、アメリカ東部 マサチューセッツ州ボストンでの出来事をお話しします。
アメリカ東北部のマサチューセッツの州都 ボストンは、とてもきれいな街です。
チャールス川を挟んだ両岸にボストン大学、川の向こうのケンブリッジ地区にハーバード大学、少し離れたところにマサチューセッツ工科大学(MIT)があります。
MITは、小澤征爾さんが指揮をとるボストン交響楽団はもちろん、アメリカの音響学会もあるため、有名なスピーカーメーカーが数多くあります。あの有名なスピーカー「Bose」も、MITのDr.Boseによる発明です。
私は当時、オハイオ州シンシナティに工場を構え、GMやその他多くの日米の工場を取引先とする、ファインケミカルの現地法人 代表取締役社長をしていました。
ボストンは、アメリカにしては珍しく有料道路や一方通行の道路が多いため、アメリカ人でも運転しづらい地区と聞いていました。そんな街で、私は担当営業のアメリカ人と一緒にこの地区を訪れていました。
有料道路の料金所で料金を徴収している黒人のおじさんに道を尋ねたとき、以下のようなやりとりがありました。
“Would you show me how to get MIT?”
「MITに行くにはどう行ったら良いですか?」
“You just study very hard, then you can reach to MIT.”
「しっかり勉強しろ、そしたら行き着くから。」
私の息子がMITのコンピューターサイエンスの学生で、時間があったので会おうと思い、大学への行き方を尋ねたのですが、私は黒人のおじさんがまさかこんな冗談を言うとは思わずポカンとし、すぐに気づき大笑いしました。
ボストンは、観光も素晴らしい都市です。ハーバード大学創立者の銅像は、訪れる人みんながその銅像の足を手で触るので、足のつま先がピカピカに光っているのです。
鯨の潮吹きの船ではホエールウォッチングを楽しめ、イングランドクラムチャウダーやロブスターロール(ロブスターのホットドッグのようなもの)も味わえるのは最高です。
自転車で学校に通っていた息子は、冬場は耳がちぎれそうに寒いと言い、これを聞いた家内は慌ててシンシナティから耳当てを送ってやりました。
MITには世界中から優秀な学生が集まり、アラブの王族の息子さんなどは運転手つきのベンツだったそうで、それを横目で見ながら自転車で通学していた息子は、勉強と同時にハングリー精神も身についたようです。
ちなみに、当時のMITの年間予算がフィリピン一国の国家予算より大きいのには驚きました。MITは工学関係の大学で、東京大学は工学部・医学部・法学部などを擁する総合大学ですが、もちろん東大もはるかに上回る数字です。
しかもMITは私学で、そのほとんどの卒業生の寄付は大学開発のパテント収入など。その予算の豊富さ、単に物量だけではないその総合力には驚きました。
親の私は、息子の授業料の高さにも驚きましたが。
「海外生活45年を迎える私の海外体験記」より抜粋
清水 大輝
筆者略歴
- 昭和47年 工学部機械工学科卒業
- 三井系の機械メーカーに就職
- 海外製鉄所向けのプラント
見積もり設計の国際入札の窓口を5年経験 - ケミカルメーカー
国内営業を経験後、フィリピン・マニラに駐在事務所を開設 - シンガポール駐在を経て米国ロスアンゼルスに赴任
- 米国でデトロイト、アトランタの事業所を開設
- LAとオハイオに工場を建設
- ノースアメリカの代表となる
- 大手自動車メーカーとの取引を10年かけて開始