「海外オペレーションと今後の語学学習の考え方」4/7
製造ラインを3〜4m御社に貸してあげるから、このラインに自分たちのロボットから全てを入れて、アウト―インで一台あたりの料金をチャージしてくれないかなどいろんな提案がありました。
喜んでいろいろ検討すると、これはとんでもない罠だと気づきました。まず、クレームが起こると会社は倒産するほどのリスクを負います。減産をいきなりされても文句が言えません。ていのよい委託在庫で、彼らは今のデパートでいう場所貸し商売をやろうとしていることに気付き、丁寧にお断り。
大手自動車メーカーのネオンの開発のときにはリスク分散のため、開発費用をメーカーとサプライヤーが共同開発という方式をとりました。公募方式で参加資格は決定権を持っているものだけが参加してくれ。金額の入っていない小切手を持ってこい。
これが条件です。例えば、ネオンのロッカーカバーをメタルからプラスチックにすると、誰がどれだけ得をするかという計算を参加者の前でやるのです。
当時の命題は、軽量化、燃費、静かさの3つです。プラスチック化は軽量化に大いに貢献します。また、一体成型により部品点数を減らすことができます。振動に対する大幅なセールスポイントはあまりないのですが、我々の技術を使ってその騒音を止める方法があります。私も金額を書き込んでいない小切手を持って参加です。たった一人の日本人の責任者です。まるで鉄火場です。みんな目が血走っています。このときばかりは緊張しました。
嬉しかったのは、いよいよ大手自動車メーカーに採用が決まり、役員とVIPしか入れないレストランに案内されたときです。あてもなく雪道を車でふらふらしていたことが思い出され、本当に夢みたいでした。
最初のころは「会議をするのにネクタイをしてくるな。創造的な仕事をする人間は首から上は絶対に縛られていては良い知恵がでない、よいな。」と念を押されました。
そしてエンジニアと親しくなって、接待のつもりでステーキハウスに入りました。席について注文をしてすぐに、若いエンジニアは自分のテーブルの右に自分のクレジットカードを出しました。私にも同じようにしてくれと頼まれたのです。
誰が見ても部品メーカーとはそれぞれ自分のお金で食事をしていることを明らかにするための当時のルールでした。お店の人はそれぞれのカードで決済をするのに手慣れたものでした。
サターンの小型車のエンジン開発のときには50トンの見積もりを出せと言われてその見積もりを出して、実際には月5トンの使用量だと判明したので出荷前に直談判です。
この時にものを言ったのは、先に述べたFairの精神を強調しました。
真っ赤になって購買担当は腹を立てましたが、納品前に12%の値上げをした日本人はお前が初めてだと言われました。それでも別れ際に握手を求めてきて、お前は立派だと言ってくれました。アメリカ人は潔い人が多いとそのときに感じました。
清水 大輝
筆者略歴
- 昭和47年 工学部機械工学科卒業
- 三井系の機械メーカーに就職
- 海外製鉄所向けのプラント
見積もり設計の国際入札の窓口を5年経験 - ケミカルメーカー
国内営業を経験後、フィリピン・マニラに駐在事務所を開設 - シンガポール駐在を経て米国ロスアンゼルスに赴任
- 米国でデトロイト、アトランタの事業所を開設
- LAとオハイオに工場を建設
- ノースアメリカの代表となる
- 大手自動車メーカーとの取引を10年かけて開始
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